心不全 | 病気と治療方法
心不全

心不全とは?

心臓は、生命維持に必要な酸素や栄養素を含む血液を全身に送り出すポンプの働きをしています。1日に約10万回拍動し、1分間に約5Lの血液を全身に絶え間なく送り出している、働き者の臓器といえます。 そして、心不全(しんふぜん)という病気は、その心臓のポンプ機能が低下することで起こる全身の病気です。日本では、高齢化社会になっていくにつれて、心不全の患者数は年々増加しており、2030年に130万人に到達すると言われています。

どんな原因がありますか?

心不全の原因(ポンプ機能が低下する原因)は多岐にわたっており、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)・高血圧症・弁膜症・心筋症・不整脈・先天性心疾患・睡眠時無呼吸症候群などが挙げられます。特に、虚血性心疾患と高血圧で全体の7割近い原因を占めています。

どんな症状がありますか?

心不全の症状には、低拍出(全身に血液がいかない)ために起こる症状と、うっ滞(血液・水分が体にたまる)ために起こる症状があります。

心不全の症状

低拍出による症状
坂道・階段での息切れ、全身倦怠感、手足が冷たい感じ、日中の尿量・回数の低下など

うっ滞による症状
体重増加、足のむくみ、夜間の呼吸困難・咳、食欲不振など

また、心不全の重症度を表すNYHA心機能分類が有名です。

NYHAⅠ度(無症候性)
心臓に疾患があるが、日常生活では症状が現れない。
NYHAⅡ度(軽症)
安静時には症状が現れないが、日常生活の労作で症状が現れる。
NYHAⅢ度 (中等症~重症)
安静時には症状が現れないが、歩くなど軽い労作でも症状が現れる。
NYHAⅣ度(難治性)
安静時にも症状が現れ、ごく軽い労作で症状が悪化する。

重症度が重くなる程、死亡率が高くなります。ある研究では、難治性の心不全は、治療しない場合、約半数の方が1年以内に死亡すると報告されています。
また心不全は、再入院を繰り返す疾患としても知られています。その要因として、原因疾患の進行もありますが、内服薬の自己中断・風邪等の感染症・精神的肉体的ストレスなどの日常生活の乱れが再入院を誘発する要因と言われています。

どうやって診断するのですか?

一般的な問診・診察を行ったのちに、胸部レントゲン・心電図・心エコー・血液検査(BNP:心不全の程度が分かるマーカー)などの検査で心臓の機能を調べます。必要に応じて心臓カテーテル検査・心筋生検・心臓MRI等の検査も行い、心不全の程度と原因疾患の特定を行います。

▲心収縮能の低下した例です

▲正常心機能例です

どのような治療方法がありますか?

病期の進行に応じて治療を行います。治療には大きく分けて、薬物療法・非薬物療法(酸素療法(在宅酸素療法)、和温(温熱)療法、運動療法)・医療機器の使用(ペースメーカー、人工心臓など)・手術療法などがあります。また、原因疾患によっても治療方法が異なります。心不全治療で最も大切なことは、生活習慣の改善や規則正しい服薬など日常生活の管理です。
薬物療法には、利尿薬、ACE阻害薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、ベータ遮断薬、ジギタリスなどがあります。

日常生活で気をつけること

心不全をお持ちの方は、日常生活において以下のことに気を付けて下さい。

  • 塩分を控える(目標は1日7g未満)
  • 水分を取りすぎない
  • 禁煙
  • 飲酒を控える(重症例は禁酒)
  • 十分な休養と睡眠
  • 症状に合わせた適度な運動(ややきついと感じる一歩手前)

また、心不全の方には、心不全手帳をお渡ししています。毎日、血圧・体重・むくみの有無などをチェックすることで、心不全増悪の早期発見や治療効果を知ることができます。特に、体重が増えてきたり、足や顔にむくみが出てきたり、疲労感や息苦しさの悪化を認めるようであれば、心不全が悪化の可能性があるので、早めに病院を受診して下さい。日常生活に気を付けながら心不全と付き合っていく必要があります。